異次元を見る魔法:KYOTARO「Clad in the Universe-宇宙を纏う」

ギャラリーに入った瞬間、まるで、知らない土地のどこまでも続く空を見上げたような、爽快で新しい色彩を感じる不思議な感覚に胸が高鳴りました。

KYOTAROの大型の新作が彩るディーゼル アート ギャラリーは、いつもとちょっと異なる爽やかで温かい空気に包まれています。KYOTAROの絵画の力なのでしょうか。内包された繊細で神秘的な表現が生み出す優しい空気と、色が奏でる鮮やかで軽快な空気が合わさって、とてもとても心地よいのです。

渋谷の駅からほど近いディーゼル アート ギャラリーは、ファッションブランドである『DIESEL』が手がけるショップの奥に広がる地下のスペース。そのセレクトがいつもクールで、いわゆる美術業界の感覚とも違う、モードやストリートな感覚のあるエッヂの効いた表現が多く見られ、よくチェックしている場所のひとつ。

まずはビッグニュース。KYOTAROの素敵な“色のペインティング”がある!!! 私が初めて作品を拝見したのはつい2年前の2015年。「MONOCHROME展」にて。

KYOTAROの作品はすべて鉛筆での細密な美しいモノトーンでした。それから過去の作品もいろいろと勝手に調べたのですが、細密な中に彩色が施されたものはいくつか見つけたものの、ペインティングという形は初めて。

今回のKYOTARO、いつもよりぐっとカッコイイというと言葉が簡単になってしまってアレですが、スカッと抜けたような洗練された空気があって、とっても素敵なんです。

KYOTAROさん(左)。お名前を聞くと男性? と思われると思いますが、実は女性。鑑賞者が描き手の性別に左右されることなく、フラットな気持ちで鑑賞してもらいたいという思いから付けたペンネームなんです。

もちろん以前からの独特の質感での鉛筆画も健在。いや、さらに世界が広がったような、新しい領域を描こうとしているように感じられて、いっそう魅力的な世界観に。絵の向こう側に光を感じる、とても透明な空気。これがKYOTAROの感じる宇宙にちがいない! ということで、ご本人に直接お尋ねしてみました。

KYOTARO氏に聞く、めくるめく想像の世界とその表現法

Junko(以下J)「描くペースが早いですよね。これだけたくさんの絵を描き続けてることに、どこまでも感動します。いや、尊敬します! 絵のイメージはいつもどういう風に決まっていくのでしょうか?」

KYOTARO(以下K)絵についておもしろいことはできないかと常日頃考え、いろいろなアイデアが湧くたびにストックしているんです。企画やプレゼンの機会をいただいた時に、そのストックの中から媒体の企画に合うようなアイデア出しをする。たとえば今回の展示の構想は、実は5年ほど前に浮かんだもの。“神々はどのような衣を着ているのだろう。神々の衣を描いてみたい”というのが元のアイデアでした。ディーゼル アート ギャラリーというアパレルブランドの基盤があるギャラリーで行う際に衣は重要だし、あのアイデアを膨らましてみようか……と」

J「なるほど。神々の衣が、題材の“宇宙”につながったのはなぜなんですか?」

K「“神さまシリーズ”は、以前、発表してしまっていて。そんな時、私が京都にアトリエを設けた際、『空が近い。星もその辺で光っているように見える』と感じたことを思い出しました。一方で、自分は地球にへばりついているようにも。宇宙(そら)を飛び交う神々……いや、10万年後、人間がいたとしたら、現在では考えられないような技術を使用しているはずで、人間が飛び交うこともあるのかも。サイエンスフィクションの映画を作っているかのようにさまざまなイメージが溢れて、未来人への憧れが想像上で増していったんです」

J「SF! 面白いですね。お話を聞いて、常に頭の中でストーリーを展開している方なのだと、わかりました。ちなみにFacebookの投稿でお見かけしたのですが、KYOTAROさんは“女性性”を描いているとのこと。それって宇宙=母=女性ということなんでしょうか?」

K「母と限定しているわけではないんです。人間1人1人は、男性性、女性性、どちらも持っていると思うのですが、今回は“意識としての女性性”を抽出したというのが主体にあります。また、皆さん、いろんな女性性を求めていらっしゃると思いますが、今回、私が提案するのは“ふんわり、爽やか、さっぱりとカッコイイ女性性”で、老若男女、皆さんが共有できるような作りに構成しました」

J「そういった女性性で、どなたかモデルになるような方はいますか?」

K「制作中、自分の周りに妊婦さんが3人も出現しました。《スペースタイムレディ》なんかは、妊婦さんを守る服があったらいいなと思って制作したものです。顔などを特定するモデルはいないのですが、意識の次元を題材に、今回の展示にピッタリな女性像を形成していきました」

J「このギャラリーでやることによって、良い意味で影響を受けた、非常に洗練された今を感じる素敵な絵だなぁと思ったのですが、ご本人の中でペインティングをやる時は鉛筆画と比べ、どのような感覚の差がありますか?」

K「鉛筆画は長時間集中して仕上げていきます。消しゴムも使用するので修正は可能なものの、最終的に鉛筆の線を面の描写にならしていくので、大変時間がかかり、着実に一歩一歩進めていく作業です。一方、ペインティングは即興性があります。今回のペインティング作業は“抽象”と“具象”を織り交ぜていて、特に抽象部分の制作時には液だれしたり、すぐ乾いちゃったり、すぐ乾かなかったり。。鉛筆と違って、要素、特徴がさまざまで、ペイントされたキャンバスのいい感じのポイントをピックアップして集めていく、という作業を繰り返しました。ポイントを集めた抽象画を並べて眺めることでイメージが浮かんできて、その後に仕上げていった、という感じです。非常に感覚的で楽しい作業でもありますね」

J「KYOTAROさんの新しい側面が感じられたのは、そういった点からなのですね。では最後に、“10万年後の宇宙”に未来人がしている生活のイメージがあれば聞いてみたいです!」

K「そうですね……光を着ている。身体を浮かせたり飛べたりできる。ケンカする必要がない。各々のデータを交換できる。話が早い。ごまかせないシンプルさ。常に健康体。自由自在。より高度な次元上でのルールが明確。グッドシステムを常に発明し続ける機能がある。多幸。助け合い。一瞬で済む。バランスがいい。宇宙平和に向かっている……など、それらは理想の世界ですね」

J「膨らみますね! KYOTAROさんと話していると、この絵画の中をつぎつぎと旅しているような妄想を掻き立てられます。楽しくて止まらない!」

(以下、延々とおしゃべりはつづく……)

作品を拝見しても感じられますが、言葉で聞けば聞くほど、彼女の頭の中に、常にめくるめくイメージが展開していることがうかがえます。これだけのイメージをアウトプットしていく脳内は、現代と未来を常に行き来しているにちがいありません。今回の作品が好きすぎて、インタビューをきっかけにいただいたお時間にもかかわらず、ご本人とギャラリーにてうっかり話し込んでしまいました。

また会場にはいままでの貴重なグッズが大集結しているのも見逃せません!! 美しい本の数々、スカーフにタロットカード、トートバッグはどれもイチオシの可愛さです。

思わずスカーフを巻いてみる。髪色と合うぞ♥

国内での多数の個展のほか、ニューヨーク、マイアミ、北京、上海、サンフランシスコ等でのグループ展にも参加し、国内外で積極的に作品を発表。個人の創作活動からコマーシャルワークまでこなすKYOTAROは、いま、まさに注目される作家のひとり。4月28日にはサイン会も開催されます。美人なKYOTARO氏に会える貴重なチャンスをお見逃しなく!

「Clad in the Universe –宇宙を纏う- 」by KYOTARO

会期:~2017年5月18日(木)

会場:DIESEL ART GALLERY(東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1)
TEL:03-6427-5955
開館時間:11:30~21:00
休館日:不定休

入場料:無料

URL:http://www.diesel.co.jp/art

※サイン会は4月28日(金) 19:00~21:00に開催。