オシャかわ図鑑2018 vol.01「ACUOD by CHANU」
オシャかわ図鑑とは
いま、ここのこのアイテムが面白い!! 買い時! 知っとけー! 的なピックアップシリーズ。
ファッションのみならず、ビューティ、ライフスタイルなど幅広く探していきますので、ちらりと覗いてお楽しみくださいませ。
ブランドのアイコンとも言えるマスク。
偶然見かけて、目が離せなくなり、おもわず手に取る。
デザイナーであるCHANU(チャヌ: 李 燦雨) さんと話して試着して すっかり好きになってしまったのは2017年の冬。
現代を象徴するかのような、ストリートモード。
ユニセックスで着る人が自由にアレンジできるスタイルやサイジング。
若いパワーが溢れるデザインだが
CHANUさんは驚くほど緻密なコンセプトを練っていて
若手と軽んじることなかれ。
ストリートなデザインって、実はなんだか私にマッチしなくて
どうもなかなか着ることが少なかったのですが
ACUOD by CHANU にはとっても興味が湧いてしまい
2017年末にアトリエ取材をした。
織田信長はヒップホップ?!
現代へチャレンジし続ける”ACUOD by CHANU”
Junko(以下J)「昨年行われた2018ssコレクションのテーマが「戦国時代」というのが意外で、びっくりしました。このコンセプトを選んだ経緯を教えてください。」
Chanu(以下C)「2018ssシーズンは、日本の戦国時代、特に織田信長にインスピレーションを得て作品を作りました。コレクションのテーマは言語化すると、
“ZIP OUT TO THE WORLD” です。
戦国時代の下克上の状況が今のファッション界に近しいと考えたこと。また戦国時代を調べている過程で、織田信長という武将は、当時の既得権益に真正面から勝負を挑んだり、木造船が全盛の頃に鉄甲船を作ったり、鉄砲を実戦に取り入れて戦い方そのものを大きく変えたりと、新しい試みをたくさんやっていまして、そういう既成概念にとらわれない様々なアイディアで時代を駆け抜けた織田信長は、戦国大名の中で最も「ヒップホップ」な武将だと感じ、そこからインスピレーションを得ました。」
J「着眼点が面白い!!ヒップホップの精神を戦国時代に見い出すなんて、ますますCHANUさんの脳内に興味が湧きます。いつの時代も、時代を制する人物とは、時代それぞれのアバンギャルドな人ですものね。私もCHANUさんのコレクションを拝見して、この時代で勝ってほしいな!という気持ちになっています。なにせ、しばらく東京コレクションから気持ちが離れてしまっていて。どうしても見たいって思えるランウェイになかなか出会えないうちに、ランウェイ取材はちょっと減らす傾向ですね。初めて行ったときは感動したし、いまはもっとその現場の人が身近になっていて、興味がないわけじゃないんですが。。。うーん。」
C「今のファッション業界は全体的に勢いがあるとは言えず、新しいブランドが参入するのが非常に厳しい状況です。百貨店もセレクトショップも「売れ筋」のブランドを扱い、その結果どこのショップも同じようなラインナップになってそのショップで買う意味が薄れ、結果お客さんも離れていって売れなくなる、という悪循環になっています。ほとんどのショップは新たなブランドを開拓するよりもプライベートブランドを強化して行き、それも「売れ筋」のデザインに寄せています。
勿論いろんなブランドの考え方があり、必ずしもベーシックが悪いとは言いませんが、ベーシックに寄せれば寄せるほど、究極は素材開発からやっているユニクロには勝てないと思っています。僕らのような小さなブランドは、ユニクロのような巨大な企業とは逆のアプローチで、大手が絶対に真似できないような魂のある作品を創っていかないと勝負になりません。」
↑ ACUOD by CHANU デザイナーのCHANU(チャヌ: 李 燦雨) さん
ACUOD by CHANUという弾丸を、世界へ!!
J「本気で投げる直球。いいですね。一見アーティスティックなタイプなのかと思ったんですが、とても勉強家だし冷静に社会を見ているのがすごいなぁと思う。若いのに経営者としての視点も備わっていそうですね。ブランドで新しい試みが多いと、それだけ反響も大きいと思うのですが、いかがでしょうか?」
C「東京コレクションを何度かやってみて感じたのですが、新しい試みに対して、ありがたいことに応援してくださる方はたくさんいらっしゃるんです。中には批判的な方もいて、批判されること自体は全く問題ないのですが、展示会に来てもいないし、ましてやファッションショーを見てもいないのに、ショーのルックの写真だけを見て判断して批判する方がいまして。しかも服を見ていないので内容が間違えていたりして、間違えた内容で間違えた認識のまま批判されていたんですね。
ACUODの服は構造的に変形したり、ドッキングしたりする服があるのですが、ショーの演出ではブランドのイメージやストーリーを伝えることを重視していて、説明的になり過ぎるのをあえて避けています。ファッションショーではまず音楽やカルチャーを含めたブランドの世界観を伝えて、細かい服の構造やディティールは、展示会で実際に着て感じていただけたらと思っているので。なので実際に服を見て、それで批判されるのはいっこうに構わないですし、批判は勉強になるとも思っているのですが、服を見ずに間違った情報や認識のまま批判されることを経験して、それはさすがに納得が行きませんでした。
そういった経緯から、そんな現状に対して戦いを挑むべく、プレスリリースにはこういう文章を載せました。↓
ACUOD by CHANUは、守りに入ろうとする閉鎖的な時代だからこそ、ファッション界を盛り上げるために、攻めの姿勢で、以下の事柄と戦っていきます。
【実際に物を見てもいないのに想像で評価する人たち、出る杭を打つ風潮、新しい試みを避けようとするマインド、リスクを取らずに守りに徹する人たち、変化を恐れてただ同じことを繰り返す潮流etc…】
立ち上げ一年足らずのブランドだからといって、大人しくしているつもりは更々ありません。
「ZIP OUT = 弾丸などがビュッと音を立てて進む」
私たちは、自分たちが信じる「ここにしかない」カッコよさを追求し、ACUOD by CHANUという弾丸を、世界に放ちます。」
J「直感的にCHANUさんの服が目に入ったのは、その戦う精神かも。モノが訴えかけてきていて、気になることありませんか?私よくあるんですけど、それって今の自分の波長、感情と合っているってことだと思うんです。もともとブログを始めたとき、私もCHANUさんのような果敢な気持ちが強かったのですが、8年経って停滞したり自分で打開出来ていない箇所が多々あって、そういう気持ちを払拭できるようなブランドを探していたのかな、って気がつきました。」
【[ACUOD by CHANU] 2018 S/S】on Youtube
あまりの演出に見入ってしまう。ショー冒頭は織田信長が戦いの前に舞ったと言われる「幸若舞」。幸若舞は「日本最古の舞」と言われ、歌舞伎や能の源流になった舞だそうで、この敦盛を若柳恵華さんが舞っている。若柳恵華さんは、本名が「幸若千加子」さんで、幸若舞の創始者のご子息にあたる。2番目のパフォーマンスは、Hip Hopの「Krump」というジャンルの日本チャンピオンで、世界大会で準優勝しているKTRさんが、織田信長の甲冑(南蛮胴)を着て、”現代版信長”としてダンスを披露している。
日本最古の舞を、最先端のファッションの舞台で。そして、今回KTRさんは、若柳恵華さんのお稽古場に行って幸若舞の型を習い、その動きをKrumpに取り入れています。日本最古の舞の型を、最先端のストリートから生み出されたKrumpに入れる事で、時間と空間を超えたコラボレーションが実現しているそうだ。
ファッションショーという枠から大きく突き出た演出での表現力は、ACUOD by CHANUの大きな着目ポイントと言える。
J「ショーの映像を拝見して、とてもダイナミックで演出にこだわっていることに感動しました。間近で見ると、服1つ1つの巧みなファスナー使い。こういうかっこいいモチーフを使うだけではなく、とてもよく考えているデザイナーさんなのだなぁと感心します。
ギラギラ系かと思いきや、整理されてるところが私の中のかっこいいポイント!
ちなみに、今、Chanuさんが1番注目しているブランドってありますか?」
C「特別注目しているブランドはありません。もちろん他のブランドのコレクションは見ていますし、実際に展示会やショップに行ったりしてデザインや縫製を含めて拝見してはいます。時代に逆らうにも、時代を知っておかないと逆らうこともできないですから。でもそれに影響されたりすることはありません。
しいて注目ブランドをあげるなら、ファッションブランドではなく、例えばアップルやポルシェなど、機能性を追求しながらデザインとしても両立させている企業のプロダクトに対する姿勢には注目しています。」
改めて服を見て、話して思う。
興味の理由はCHANUさんのコンセプチュアルなデザイン。歴史から現代という時空を超えた場所での表現に
見た目のインパクトとはウラハラに(?) デザインの至る所に配慮があって
一着一着のデザインの話を聞いているだけで興味深くて発見がある。
特に、その巧みなジッパー使いにすっかり見入ってしまう。
素材使いも面白く個性的。
驚くほど薄い生地や繊細なレース、がっしりとした厚手のレザー
どんな素材でもメタルパーツやジッパーがあるので、作るのも大変そうだが
ふんだんに一流な素材を使い、独自のバランス感覚で仕上げているのが なんともかっこいい。
うわぁー、すごい、こんなの着てみたい!って好奇心をくすぐられる服がいくつもある。好奇心?むしろ着こなしてやるぜ!的な戦闘意欲かもしれない。そしてこの服と一緒に、この時代を駆け抜けてみたいという気持ちが湧き出してくる。
J「3月の東京コレクション、いよいよですね。次はどんなコレクションになりそうですか?」
C「次のコレクションに関する具体的な内容は、妻にも話していないので言えませんが、全力でACUODらしい作品を創りますので、ぜひ楽しみにしていてください。」
すでに多方面のメディアで注目を集めているACUOD by CHANU。
NHKWORLDでも密着取材が行われている。
少しファッションショー離れしてしまっていた2016年〜2017年。
2018年。東京コレクションがとても楽しみ。
CHANUさんとの出会いに感謝!!
ACUOD by CHANU NHK WORLD
ACUOD by CHANU official HP http://acuod.com/
ACUOD by CHANU Brand Profile
[ブランド創設年] 2016年
ACUOD by CHANU(アクオド バイ チャヌ)は、デザイナー李 燦雨により立ち上げられたユニセックスモードストリートブランドです。
2016年4月JFW-IFFに参加。2016年5月初の展示会、インスタレーションショーを行い、2016年10月東京ファッションウィークにてランウェイデビュー。
ブランド名の「ACUOD」の由来は、Ace Creation Unisex Original Dressの略称であり、また、日本語の「同化」という文字(DOUCA)を反対に並べた造語でもあります。
「同化」の反対語は「異化」であり、「ACUOD」はその両方の意味を持っています。
同化=異なるものを取り込んで、新たなものに昇華させること。 異化=日常的で見慣れた題材を異質なものに変化させること。「メンズ/レディース」「ストリート/モード」「スポーティ/フォーマル」などの境界も関係なく、どちらにも「同化」し更に洋服だけでなくカルチャーも含めた様々なテーマに対して、ジャンルにとらわれず異質な要素や概念を取り入れて「同化」し、新しい価値観を創り出して(異化)いく。そんなブランドとしての願いが込められています。
Designer Profile
CHANU(チャヌ: 李 燦雨)
1988年韓国生まれ。2013年東京モード学園高度専門士コース入学。
A DEGREE FAHRENHEITのインターンシップなど数社で経験を積み、ACUOD by CHANU設立。LINEAPELLE-MILANO INTRECCINCANTIERE2016 2位、東京新人デザイナーファッション大賞2015 秀作賞等の16のコンテストで受賞している。